読書感想文その3「鬼平犯科帳(三)」

ここでやっとその3だぁ。三巻では、鬼平様が、「うさぎ」こと木村忠吾を御供に京へ旅に出ます。そんなつもりはまったくないのに、行きも帰りも事件に巻き込まれて・・・というもの。
いいお話が多くて選ぶのは難しいのですが、この2編について書くつもりです。

「兇剣」「むかしの男」


「兇剣」
  京都を後にした鬼平様が、奈良に向かう途中で事件に巻き込まれます。なんと言っても、鬼平様危機一髪。危うく敵の放った刺客どもにやられそうになったところで、なんと!岸井左馬之助が登場です。人相を見る左馬之助は、かつて平蔵に「寿命は50歳まで」と言ったことがありましたが、この命の危機を乗り越えたことで、もうちょっと平蔵の寿命は延びたようです。鬼気迫る話なのですが、始まり方は実にのんびりしたもので、木村忠吾を連れて鯉の洗いに舌鼓を打ち、お酒をたっぷり頂いて、そこいらの草原でお昼寝をするという…なんだか真似したくなるようなひと時です。
  本当に、池波先生がお書きになる食事シーンは美味しそうなのですよね。んで、池波先生シリーズを読んでいると、やっぱり日本酒が飲みたくなります。普段はアルコールなら何でも、なワタクシですが、鬼平を肴にするときはやっぱ日本酒ですよ。日本酒。


「むかしの男」
  えーと、上の感想文を書いていたらどおしても飲みたくなって、今軽く酒を投入しながら書いているbantanです。住吉(山形県のお酒です)の特別純米なんぞを、自作のぐい呑み(母には、「これって蕎麦猪口?」と言われました)でちびちび飲っております。
  さて、本編の主役は、長谷川平蔵夫人の久栄様。平蔵様を支え、長谷川家を守り、夫の部下や密偵たちへの気遣いも素晴らしい、さすが鬼平様の奥方!その久栄様は、娘の頃ひどい男にだまされて…そのむかしの男が、20余年経ってから彼女のもとに現れます。印象に残ったシーンは、久栄様がそいつの呼び出しに応えて会うところ。20余年の歳月を二人がどう過ごしたのか、その違いが鮮やかに書かれています。一方は自堕落のまま醜い中年となり、盗賊の仲間にまで成り果て、一方の久栄様は、「この女はこのように美しくなっていたのか」とかつて捨てた相手が驚愕する。もう若くないからこそ、生き方の差が、姿に美醜として表れるものなのだと思います。
  さらに、この話ではまたも佐嶋忠介様が渋い活躍を。過去のいきさつは、平蔵夫妻は誰にも話はしませんが、佐嶋様は、何かを察し、気の利いた処置をします。こういう大人には今どきなかなか会えるものではありません。自分もまるで程遠いんですがね。だから憧れますね。