読書感想文その4「鬼平犯科帳」(四)

今回、第四巻を読み返して気づいたこと。この巻には、様々な「女」が書かれています。元女郎だった女、夜鷹、女賊…女賊でも、皆個性が違っていて面白い。そしてこの四巻で、女密偵のおまさが初登場するのです。私は、おまさと平蔵様の関係がとても好きなのです。どの話を選ぶか迷います(毎回迷ってるくせに…)。
うーむ、やっぱり、おまさ初登場の「血闘」と、これまた私のお気に入りの密偵、大滝の五郎蔵初登場の「敵」にしようかな。でも、「夜鷹殺し」も捨てがたいのよ。夜鷹連続殺人事件で、町奉行所なんぞは、夜鷹なんざぁ人並みに扱わず、ろくに調べもしない中、将軍様でも夜鷹でも、おんなじ「人」じゃねぇか!と、鬼平様が単独で捜査に乗り出すお話です。
他の話も好きなのが一杯で、四巻は大のお気に入りの巻なのです。

そんでも、やはり初志貫徹でいくか?うーーーもう2−3日迷ってみよう。

そして早一ヵ月半…やっと書いたにゃ


「血闘」
  女密偵・おまさ初登場の作品です。平蔵若かりし頃、本所・深川あたりで暴れまわっていた時代からの知り合いがおまさとその父。このとーちゃんがまた元盗賊で、「鶴(たずがね)の忠助」と異名を取ったフリーランスの盗人。引退してから、本所に「盗人酒屋」なんてぇ看板を堂々とかかげて居酒屋を営んでいたってぇ肝っ玉の太い親父で、平蔵は、屋敷にも帰らないで、この居酒屋の二階にしょっちゅう寝泊りしていたとか。ほんの10歳かそこらだったおまさにとって、喧嘩が強くてきっぷのいい平蔵は初恋の人!!いやーーー、おまさの気持ち、分かりますね。私だって絶対ノックアウトだもん。
  成長し、どうしてかは書かれていませんが、おまさは盗賊の道へ入り込んでいました。そして、鬼平様が火盗改めの長官になったと知り、初恋の人への思いを大事に胸に抱き続けていたおまさは、自ら盗賊の足を洗って密偵になったのです。
  このお話は、密偵となったおまさが、浪人ものの盗賊たちにさらわれてしまったのを、鬼平様が単身、救出するというストーリー。確か、TVで吉衛門様が演った時には、おまさを救って抱きかかえた鬼平様が、「俺は、この女の情人(いろ)よ」などとおっしゃったのよねん。ドキドキで最高のシーンでした。


「夜鷹殺し」
  このお話を選んだ理由は3つ!
  -おまさがまたも活躍。私、鬼平シリーズのレギュラー女性陣で、おまさが一番好きなのですよ。鬼平様への慕情を胸に抱き、身を挺して密偵として働くおまさ。本作では、おとりとして夜鷹になりすまして犯人捜索に協力し、一度は犯人に切りつけられて怪我をしてしまいながらも、頑張って、犯人検挙に一役買っています。
  -犯人像、動機がまたスゴイ。昭和40年代に、シリアル・キラー(連続殺人者)を書ききる池波先生!「夜鷹を殺しているうちに、それが癖になってしまった」って・・・。しかも、殺しておいて身体の一部を切り取るという、まさしく異常殺人者。
  -このお話で、本所の軍鶏鍋「五鉄」初登場。軍鶏と熱燗が欲しくなる〜♪この後、「五鉄」の出番がどんどん増えてきます。


そして、「将軍様でも夜鷹でも同じ人間」という鬼平の信念と、それを支えるおまさ、彦十の交流にじんときます。